公開 2025年8月01日/更新 2025年8月01日/10 分で確認
顧客の獲得にどれだけのコストを費やしているかは、マーケターとして常に押さえておきたい数値です。その把握には、CAC(顧客獲得単価)という指標が役立ちます。
この記事では、CACとは何か、CACの種類や計算式、CPAとの違いやLTVとの関係、数値を下げるための方法などをご紹介します。
CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)とは、顧客を一人獲得するために要したコストを表す指標です。「顧客獲得コスト」と訳されることもあります。
CACは自社のマーケティングや経営判断の現状を探るために重宝します。一人の顧客を得るために費用をかけ過ぎていないか、反対に顧客獲得への投資が足りていないのではないか、などといった評価を進める際に活用できます。
CACと似た用語としてよく聞かれるのがCPAです。CPAとは「Cost Per Acquisition」の略称で、こちらも日本語では「顧客獲得単価」と訳されます。CACと同様、顧客一人の獲得にかかったコストを表す用語です。
ただし、CACとCPAでは、主な使用シーンと測定対象となるコストに違いがあります。通常、CACは、プロジェクト全体のような広い評価に利用されます。一方CPAは、特定の広告の評価など、範囲を限定した分析に用いられることが多くなっています。
また、CACが営業担当の人件費などまで含むマーケティングコスト全般を取扱うのに対して、CPAは、例えば当該メディアへの出稿費など、より限定的な費用を測定する傾向にあります。
CACは、顧客の獲得チャネルの違いから、「Organic CAC」、「Paid CAC」、「Blended CAC」の3種類に大別されます。
Organic CACとは、広告出稿のような有料施策を含まない、通常の運用で自然に(Organicに)獲得した顧客のCACを指します。
例えば、オウンドメディアやSNSの自社運用や既存ユーザーからの口コミ・紹介で得た顧客はOrganic CACで扱われます。自社によるサイトの運営費や担当部門の人件費などが代表的なコストです。
Paid CACとは、有料施策により獲得した顧客のCACを指します。Organicとは反対に、コストをかけた(Paid)チャネルからの獲得を対象とします。
例えば、Web広告の出稿やセミナーの開催などが代表例です。また、サイト運営を外注した場合の費用もPaid CACと考えられるでしょう。
Blended CACとは、Organic CACとPaid CACを合わせた(Blendedした)全体のCACを指します。一般的に、CACとだけ呼称した場合はこのBlended CACを意味します。
Organic CAC:自然に獲得した顧客のコスト
Paid CAC:有料で獲得した顧客のコスト
Blended CAC:自然、有料の両者を合わせた全体のコスト
このようにCACを分類する理由は、顧客獲得の分析では自然獲得(Organic)と有料獲得(Paid)の区別が重要な意味を持つからです。両者の区別があいまいになると、有料施策以外でユーザーを獲得できていない(持続性に不安がある)、実は有料施策で顧客を得られていない(不要な出費をしている)などの状況を見逃してしまいます。
続いて、各CACの計算式をご紹介します。
CACの基本となる計算式は以下の通りです。
CACの計算式)
CAC=顧客の獲得コスト÷新規顧客の獲得数
60万円のコストを費やし200人のユーザーを獲得したのであれば、CACは、60万円÷200人=3,000円となります。顧客一人の獲得につき3,000円が必要とされている計算です。
Organic CACの計算式は以下の通りです。
Organic CACの計算式)
Organic CAC=自然に獲得した顧客のコスト÷自然増の新規顧客数
月額20万円で自社サイトやSNSを運営し、そこから月に100人のユーザーを得ているとすれば、20万円÷100人=2,000円となります。顧客一人あたり2,000円を費やしている計算です。
Paid CACの計算式は以下の通りです。
Paid CACの計算式)
Paid CAC=有料で獲得した顧客のコスト÷有料で得た新規顧客数
Web広告に100万円を費やし、そこから400人のユーザーを獲得したとすれば、100万円÷400人=2,500円となります。顧客一人あたり2,500円を費やしている計算です。
Blended CACの計算式は以下の通りです。
Blended CACの計算式)
Blended CAC=顧客獲得の総費用÷獲得した新規顧客数
人件費や出稿費など全コストとして500万円を支払い、1,250人のユーザーを獲得したとすれば、500万円÷1,250人=4,000円となります。顧客一人の獲得につき4,000円がかかっている計算です。
LTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)とは、顧客一人が特定の企業やブランドで取引を開始してから終わるまでの間にどれだけの利益をもたらしてくれるかを表す指標です。
LTVとCACを同時に用いると、事業の健全性を図ることができます。LTVの金額よりもCACの金額が大きい場合、得る利益よりも獲得費用の方が高額であると判断できるためです。
なお、上記の考え方に基づいてLTVをCACで割った指標を、ユニットエコノミクスと呼びます。ユニットエコノミクスは主にサブスクリプション型サービスを評価する際に用いる指標です。数値は2~5程度が望ましいと考えられており、1よりも大きければ利益が出ている、1を下回ると利益が出ていない状況を表します。
LTVの計算式や重要性は以下の記事もご確認ください。
>>LTV(ライフタイムバリュー)とは?重要性や計算方法、高める方法・ポイントについても紹介
では、CACを下げるためにはどのような方法があるのでしょうか。
顧客獲得チャネルの最適化は、マーケターがCACを活用する意義そのものだといえるでしょう。費用対効果に優れたチャネルに注力し、効果の乏しい顧客接点は運用を停止するなど、算出したCACをはじめとするデータをもとに改善していきましょう。
CACの低下にはコンバージョン率の改善が有効です。Webマーケティングの場合、動線の見直しやページ表示速度の改善などといったサイトのブラッシュアップを進めることで訪問者を逃しにくくなり、CACを下げられるケースもあります。
コンテンツマーケティング(主に自社メディアで顧客に価値のある情報を提供する手法)の実施も、CACを下げるために役立つことがあります。
SNSや自社サイトを通じて魅力的な情報を提供し続けることで、検索エンジンからの自然流入が増加し、コスト次第でCACを下げられます。
チャネルの最適化、サイトの改善、コンテンツマーケティングの実施と、CACを下げる方法をご紹介しましたが、忘れてはならないのが、CACが指す顧客獲得コストにはこのような作業で発生する費用自体も含まれる点です。したがって、CACの低減には効率的な作業が求められます。
効率的な作業を実現する手段としては、顧客エンゲージメントプラットフォーム「Braze」の導入が有効です。Brazeでは複数のチャネルを一元管理し、施策別のパフォーマンスを分析できます。注力すべきチャネルを素早く正確に導き出すなど、限られたリソースを有効活用していけます。
またオーディエンス連携機能により、ファーストパーティの顧客データを活用し、ターゲティングを行い、広告を配信、またはコンバージョン済みのオーディエンスには広告を抑制するなど、すべてのキャンペーン費用を最適化することができます。
AI支援機能により顧客へお届けするコンテンツ(メッセージや画像など)を一瞬で作成できるのもBrazeの魅力です。まずは以下のリンクより、CACやマーケティングに関するお悩みをぜひお聞かせください。
重要な知識としてお伝えしたいのは、CACは低ければ低いほど良いというわけではないことです。CACが極端に低い場合、顧客獲得への十分な投資が行えていない、ひいては事業拡大のチャンスを逃しているとも考えられるためです。
一つの目安として、LTVがCACの3倍となる状態が適正とされています。この数値を目安に施策を実行していくと良いでしょう。
CACとは、顧客を一人獲得するためにかかったコストのことです。LTVとの組み合わせにより、事業の利益と費用のバランスを評価するのに役立ちます。3種類の計算式を使い分けながら、自社のCACを算出していきましょう。
CACは低すぎても問題であるなど、取扱いに注意が必要な指標でもあります。具体的な活用策に不安がある場合は、ぜひBrazeへのお問い合わせもご検討ください。
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