公開 2025年8月04日/更新 2025年8月04日/11 分で確認
製品やサービスを展開する際、新規顧客の獲得は必須の取り組みですが、自社サービスが売り上げを獲得し続けるためには既存顧客との関係維持も欠かせません。そのために役立つ指標がリテンション率です。
この記事では、リテンション率とは何か、その重要性やメリット、計算式、リテンション率が低い場合に考えられる課題や高めるためのポイント、おすすめのITソリューションまでご紹介します。
リテンション率について正しく理解するために、そもそもリテンションとは何を意味するのかを知っておきましょう。
リテンション(Retention)とは、保有や保持、維持を意味する英単語です。転じてマーケティング分野では、自社の顧客にサービスを継続的に利用してもらうこと、すなわち、既存顧客との関係維持やそれに向けた施策を指します。
リテンション率とは、あるサービスの継続率(顧客が解約せずに利用を続けてくれている割合)を表す指標です。リテンションレートや既存顧客維持率とも呼ばれます。
リテンション率は、高ければ高いほど既存顧客を手放すことなく関係を維持できていると判断できます。ユーザーの長期利用が収益の要となるサブスクリプション型サービスが台頭する近年、特に注目されている指標です。
顧客の維持率を意味するリテンション率は、自社サービスの現状把握と改善への重要な手がかりとなります。
リテンション率が低い場合、顧客から継続的に利用したいと思われていないと判断ができます。操作感が悪い、料金が高い、必要な機能がないなど、課題はさまざまですが、ユーザーの声を集めて改善を進めていくことで、顧客目線で魅力のあるサービスへと進化できます。
また、後ほどご紹介しますが、リテンション率を高めることには収益の安定化やLTVの向上といったメリットもあり、リテンション率を高めることで、最終的に企業成長にもつながります。
リテンション率の計算式には、簡易的なものと厳密なものの2種類があります。
簡易的な計算式は以下の通りです。
簡易的な計算式)
リテンション率(%)=継続顧客数÷新規顧客数×100%
例えば、500人の新規顧客を獲得し3ヵ月後に200人が残っていたとすれば、リテンション率は、200人÷500人×100%=40%となります。
一方、厳密な計算式は以下の通りです。
厳密な計算式)
リテンション率(%)=(計算期間の終わりの顧客数-計算期間中の新規顧客数)÷計算期間のはじめの顧客数×100
仮に、4月1日から9月30日までの6ヵ月が計算期間だとして、4月1日時点の顧客数が1,000人、9月30日の顧客数が500人、期間内に獲得した顧客が100人とします。その場合のリテンション率を計算してみます。
リテンション率(%)=(500人-100人)÷1,000人×100=40%
上記の通り、こちらもリテンション率は40%となります。
では、リテンション率を高めることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
リテンション率の向上は、収益の安定化に繋がります。リテンション率が高いことはサービスの解約率が低いことを意味しており、今後も引き続きの利用を期待できるためです。特に月額課金のサービスでは、毎月の売り上げを予想しやすくなり、さらなる投資にもつなげやすくなります。
リテンション率を高めるためには、顧客から継続利用に値するサービスだと評価してもらう必要があります。
その向上の過程では、顧客ロイヤルティ(顧客が自社やブランドに抱く愛着・信頼)やLTV(顧客が自社との取引を開始して終えるまでにもたらしてくれる利益)のような重要指標の改善も行われ、自社のファン層の拡大に繋げることもできるでしょう。
以下の記事では、顧客ロイヤルティ、LTVについて詳しく解説しています。
>>顧客ロイヤルティとは?構築方法や顧客満足度との違い・向上させるメリットについて解説
>>LTV(ライフタイムバリュー)とは?重要性や計算方法、高める方法・ポイントについても紹介
通常、新規顧客の獲得には、既存顧客から売り上げを獲得する際の5倍のコストがかかるといわれています(1:5の法則)。
さらに、既存顧客の離反率を5%よくするだけで利益は25%改善されるとする定説もあります(5:25の法則)。
リテンション率の向上を目指して既存顧客と向き合うことは、コスト削減や利益拡大の観点からも有効です。
既存顧客が長くサービスを利用すればするほど、自社に対する愛着も沸きやすくなり、次なる購買も生まれやすくなります。
アップセル(ある商品の上位商品の購入)やクロスセル(ある商品の関連商品の購入)も増え、自社のロイヤルカスタマーへの進化も望めます。
ここまでのメリットを踏まえると、リテンション率の向上は自社の成長全般へ繋がる取り組みだといえるでしょう。収益の安定、重要指標の改善、コストの削減、売り上げの拡大など、企業が取り組むべき課題を一挙に解消していけます。
では、リテンション率が低い場合はどのような原因が考えられるのでしょうか。
リテンション率が低くとどまっている場合、施策が企業目線に偏っている可能性があります。以下のような問題はないか再確認してみましょう。
サービスの魅力が適切に伝わらなければ、リテンション率の向上は難しくなります。自社としては十分に説明しているつもりなのにユーザーには届いていないということもよくあります。少なくとも以下のポイントは確認しておきましょう。
サイトやアプリの動作が重たいなど、サービスの使い勝手が悪いと顧客の離反に直結します。以下のポイントを意識してみましょう。
続いて、リテンション率をさらに高めていく方法をご紹介します。
担当者が誰であっても高品質な体験を提供できるよう、顧客対応のマニュアル化を進めましょう。
「前の担当は別の説明だった」といったクレームを防ぎ、顧客満足度を向上させられます。また、クレームが出やすい(あるいは離反率の高い)プロセスを見直すことも有効です。
サイトやアプリの使用感は動線次第で大きく変動します。サービス内容自体を変更しなくても、ユーザーの視線や指の動きを意識した適切なボタン配置を実現するだけで劇的に操作感を改善できるケースもあります。
新機能の宣伝手段一つをとっても、プッシュ通知で最新情報を素早く受け取りたい方もいれば、メルマガでじっくりと確認したい方もいます。
顧客が「まるで自分のためにあるサービスだ」と感じられるような、一人ひとりにパーソナライズされた体験を提供することも大切です。
休眠顧客の復帰促進や離脱の兆候がある顧客へのフォローも重要です。数ヵ月利用がない方に向けて「再利用で今だけ1ヵ月無料」などのクーポンを配布する、徐々に使用時間が減っている方へ「おトクな使い方をご紹介」のような利用方法の提案をするなど、マーケターにできるアクションは無数にあります。
リテンション率向上のための作業を効率的に進めるためには、ITツールの導入が有効です。CRMやCRPに代表されるような顧客との関係の管理・強化に向いたツールを利用すれば、いま何をすれば継続利用を期待できるのかをデータをもとに探っていけます。
リテンションキャンペーンの具体策については、以下の記事でご紹介しています。
>>解約を未然に防ぐ: リテンションを高める2つのアプローチ
サービスのリテンション率の向上を図りたいなら、マーケター支援ツール「Braze」の導入をご検討ください。
Brazeは、パーソナライズされた顧客体験の提供に役立つ総合的な顧客エンゲージメント支援ツールです。顧客情報や広告成果を集約し、どのチャネル・時間帯のアプローチが各顧客に有効か、この顧客層の心に響く施策は何か、などを探っていけます。
KFCインドでは、Brazeを利用してリテンション率の向上に成功しました。メール、プッシュ通知、SMS、アプリ内メッセージと4種類のチャネルを用途別に使い分け、クロスチャネルなアプローチを実現。外部ゲームと組み合わせたユニークなキャンペーンを行うことで、リピーターを27%、新規ユーザーを22%増加させたほか、1店舗の1日あたりの売り上げを23%拡大しています。
事例の詳細や最新のカスタマーリテンションに関する情報については、以下の記事にお進みください。
>>KFCインド、ゲーミフィケーション「Bucket It」キャンペーンで顧客維持と収益を拡大
リテンション率とは顧客が自社の製品やサービスを継続的に利用している割合の指標であり、サービスの評価と改善を進める手がかりとして役立ちます。サブスクリプションサービスが拡大し継続的な顧客との関わりがより重視される今のビジネスシーンにおいては無視できない指標です。
リテンション率の向上に取り組みたい、最短距離でリテンション率の向上を目指したいといった場合、ぜひBrazeの活用をご検討ください。
Brazeの最新情報を定期的にお届け